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パンドラの箱

自分の書いた小説などの文章をアップします。 いろんなジャンルがありますので、よかったら読んでいってください。読み逃げ全然OKですw

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水曜日 6:30am
ジリリリリーーン!
 目覚ましのけたたましい音が鳴り響く。
 続いて、布団の中からにゅーっと手が飛び出て、目覚ましを消した。
 そのまま……約5分。布団がもぞもぞと動き出し、冬眠から覚めた動物のごとく眠たそう

な顔を布団から出した薫子。
「ねむい…けど起きなきゃ。ええいっ!」
 気合をいれて布団を跳ね除ける。それからわざとのように大きな声で、
「さあっ! コウメイくんにごはんでもあげよう~っと!」
 と叫び、冷蔵庫へ向かった。コウメイくん、というのは薫子のペットであるアルビノの白い蛇のことだ。
 薫子は冷凍庫からエサを取り出し、シッポを持ったままコウメイくんの水槽の方へ歩み寄り、軽く水槽のガラスを叩いた。
--コツコツ。
「コウメイくーーん、ご飯ですよ~。コウメイくんってば。…あれ?」
 薫子は水槽の中をじっくりと覗いてみる。なんだか水槽の中のコウメイ君の様子がいつもと違う…ような気がする。元々が動きが活発なほうではないし夜行性なのだが…明らかに反応が鈍い。のろのろと動いて止まり、ぴくぴくと痙攣していた。
「どうしたの、コウメイ君?」
 コウメイくんは表情のない顔を微かに薫子の方へ向けると、そのまま、ぱたりと動かなくなってしまった。
「コウメイ君~~~っ!?」

水曜日 1:00pm
「おはよーございます…」
 憔悴しきった様子で薫子は風見探偵事務所に入ってきた。
 ほとんどノーメイクで、おまけに髪も毛先がほんの少しはねている。スーツはきちんと着込んでいるものの、いつもの薫子からは考えられないほどだらしのない格好だった。
「はあ。つかれたぁぁ~~」
 薫子はそう叫ぶと、荷物を机の中に放り込み、即座に机につっぷしてしまう。
 お茶を運んできた優奈はその姿を見て、さすがに目を丸くしていた。
「薫子さん…なんて姿に」
「ああ、優奈ちゃん…おはようってもう1時よね。ごめんなさい」
「急ぎの案件は入ってませんから大丈夫ですよ~。それより、コウメイ君大丈夫でしたか?」
「…それが…はぁ…」
 薫子は深いため息をついた。
「ま、まさかっ…!」
「……食べ過ぎだって」
「なんだぁ~」
「なんだぁ、じゃないわよ。こっちは大変だったんだからー」
「でもたいしたことなくてよかったじゃないですかぁ」
「まあね、それはそうなんだけどー…」
「何かあったんですか?」
「獣医さんにたっぷり怒られちゃったのよ。“可愛がるのはいいけど、餌をあげすぎるのはやめてください”って。ここのところ帰りが遅くてコウメイ君の世話が全然できなかったから、つい餌でご機嫌とろうとしちゃってたのよね…」
「飼い主の愛情も、度がすぎるとペットの負担になるってことだよな。何事もほどほどが一番」
「あ、先輩。おはようございます」
 事務所の先輩である萩原誠司だった。誠司は後ろから手を伸ばしてきて、優奈のもつお盆から湯飲みをひょいっと取ると、お茶を飲み干してしまった。
「あ~先輩、わたしのお茶!」
「茶をすする前にその腑抜け~た顔をしゃんとしてこい。そんな顔、依頼人に見せたらいっぺんに信用なくすぞ」
「すみません。……先輩なんていつもだらしない格好のくせに」
「なんか言ったか?」
「いいえ~。お化粧しなおしてきますっ!」
 薫子はあわててバックを持って化粧室へ飛び込んだ。

水曜日 3:00pm
「今日は平和ね…」
 薫子は大きく伸びをしながら、ゆったりとお茶を飲んでいた。
「ここんとこやたら忙しかったですからねっ。いい骨休めじゃないですか~?」
「そうね…」
 だが、そんな平和な時間はふいに破られた。
 ガタガタガタ、バターーン!
 凄まじい勢いでドアが開かれた。
「な、なに!?」
「ちょっと、ここ、探偵事務所よね!?」
 突然入ってきたのは目を血走らせた中年の女性だった。ここまで駆けてきたのか、髪はも息も乱れている。
 いきなりやってきた派手ななりの女性。驚きを押し隠し努めて冷静になって薫子は言った。
「どなた様ですか?」
 薫子はじっと女性を観察する。服装が乱れているとはいえ身に付けているものは高級品ばかりだ。だが女性はなおも取り乱した様子で続けた。
「ここ、何でも探してくれるんでしょ? ジローちゃんを探して。いますぐ!」
「奥様、とりあえず落ち着いて」
「落ち着いてなんていられますか! あたくしの可愛いジローちゃんが誘拐されたのよ!」
「誘拐ですか!? それならまず警察に行くべきじゃありませんか?」
「警察には行ったけど、遺失物届けを出せって言われたのよ。遺失物って、あたくしのジローちゃんは物じゃないのよ。きぃぃぃーーっ!」
「遺失物? あの、失礼ですがジローさんとは、お子さんかお孫さんでは?」
 薫子はすっかり混乱していた。努めて冷静に話しをしようと思うのだが、どうにもこのマダムの錯乱ぶりに巻き込まれてしまう。そこへ、誠司が助け舟を出してきた。
「誘拐されたというのはマダムのペットですか?」
「ええ! でもね、ジローちゃんは犬だけど、そんじょそこらの犬じゃないのよ。血統書付で、海外でも賞をいっぱいとった両親から生まれた超高級なシーリハムテリアなんですから!」
(ペットか。なるほど、それで遺失物扱いなのか)
「さっさと探して! お金に糸目はつけないわ」
「それはそれは魅力的なお申し出ですね。では、我が探偵事務所が誇る、名探偵がきっとマダムの愛犬を探し出してご覧にいれましょう。…なあ、薫子くん?」
「…え!?わ、わたし~!?」

水曜日 3:30pm
「まったく先輩ってば! めんどくさそうな仕事はすぐ私に押し付けるんだから」
「でも金払いはよさそうですし、一旦掴んでおけばいいクライアントになってくれるかもしれませんよ~」
「それもそうね」
 薫子はお茶を運ぶ優奈の後ろからしぶしぶ応接室へと向かう。
 だがそこはプロ。クライアントの前につくと、満面に営業スマイルを浮かべてみせた。
「初めまして。探偵の五月薫子と申します」
「挨拶はいいの。早くジローちゃんを探してちょうだい」
(くううっ、内面の葛藤を包み隠してスマイル0円の精神で頑張ったのにっ。いや、これもお仕事のうち!)
 薫子は、コホン、とひとつ咳払いをした。
「失礼しました。では、いくつかお伺いしたいことがあるのですが…」

 彼女は刈谷絹子という名で、この辺りからも比較的近い場所にある、某有名高級住宅地の一角に住む57歳の女性。去年中小企業の社長をしていた夫を亡くし、子供もいないため、寂しさを紛らわすために、1年ほど前から日本ではまだ珍しい犬種であるシーリハムテリアのジローを飼い始めたのだという。
 だが、つい3日ほどまえ、いつものように散歩をしていたところ、急に逃げだしてしまい、ほうぼう手を尽くしたが依然として見つからない、とのことだった。いてもたってもいられず今日も必死になってこの辺りを探していたところ、この事務所の看板を見つけ、飛び込んだのだということだ。
「逃げた時の状況のことをお話いただけますか?」
「そうねえ、いつもの様に散歩に連れ出したの。でもジローちゃんってば、玄関の所の門につまづいて、怪我しちゃったのよ。それで急いで家に帰ろうとしたの。その帰り道、いつもは大人しいジローちゃんが急に暴れ出しちゃって。怪我で興奮してたのかしもしれないわ。私びっくりして、ついリードのもち手を放してしまったのよ。そうしたら、一目散に駆け出してしまったの」
「そのとき、不審な人物など見かけましたか?」
「わからないわよ、そんなの」
「そうですか。じゃあジローちゃんを連れ去った人に心当たりは?」
「心当たり…」
 そこで、絹子はちょっと眉根をよせた。
「あるんですか?」
「あるわけないでしょ! あったらこんなところに来ないわよ!」
(こんなところで悪かったわね!)
 薫子はこめかみにわずかに血管が浮き上がるような感じを覚える。すでにこの依頼を放棄したくなっていた。だが、これも仕事だ、とぐっと抑える。
 と、いきなり絹子は薫子の方に身を乗り出した。
「でも犯人の動機はわかってるのよ!」
「え、それは!?」
「血統書つきの高級犬であるジローちゃんをどこかに売り飛ばそうって魂胆なのよ!」
「……は、はあ、なるほど」

 結局絹子から得られた情報は、あまり有効なものではなかった。ジローの写真と簡単な特徴のデータのみだ。1歳半の白いシーリハムテリア。オス。特徴としてはお腹に大きな黒いブチがあるらしい。
 薫子は、状況から察するにジローがいなくなったのは、単なる家出なんじゃないだろうかと思った。
「ちょっと強引な人だものね。逃げ出したくなっても不思議はなさそうじゃないわ。とにかく、ジローが逃げ出した付近と普段の散歩コースの範囲内をあたってみますか」


木曜日 10:00am
 薫子は絹子から聞いた、普段の散歩コースだという道を辿った。そして行く先々のお店や、犬を散歩している人を掴まえては、刈谷絹子のこと、ジローのことなどを聞いていった。

だが、その答えはあまり芳しくないものばかりだった。
「ああ、刈谷さんとこの…。ジローちゃんはすごい可愛いけど、飼い主はねぇ…」
「刈谷さん、犬を飼ったのは初めてらしいのよね。それはいいけど、ペットショップの人の言う事を聞かないし、かなり自己流で犬の世話をしてたらしいのよ。勘違いして叱ったりして…。せっかくの希少種も、あんな人に飼われたんじゃあねぇ…」
「希少種?」
「そう、ジローちゃんはシーリハムテリアっていう、まだ日本でも数えるほどしかいない貴重な犬なのよ。刈谷さんはそれがご自慢だったみたいだけど…」
(高級犬とはいってたけどそんなに貴重な犬種とはね。だから刈谷さんは盗まれたと思っているわけか。そんなに珍しい犬なら、ありえないセンではないわ)
 それにしても、ジローの行方に関して、有力な手がかりがなにひとつ出てこない。それどころか、耳にするのは刈谷絹子の悪口ばかりだ。
 探し出せるのかという不安が募るのと同時に、やはりジローは自ら逃げ出したのでは、という気持ちが強くなる薫子だった。

木曜日 5:00pm
「ふう…参っちゃったわ」
 事務所に戻ってくるなり、深いため息をついて椅子に座る薫子。
「どうしたんですかぁ? ふかぁーいため息ついちゃって。はい、コーヒー」
「ありがと、優奈ちゃん。今日色々聞いて廻ってたんだけど、思ったより難しいわ」
「犬の考えてることなんてわからないですもんね~」
「そうなのよね。そういえば、頼んでおいたもの終わってる?」
「はーい。薫子さんの言う通りにネットで迷子犬捜索のHPを巡ってみたんですけど、それらしい犬のことはなかったですよ」
「そう…」
「ねえ、薫子さん、ペット探偵なんていう職業があること知ってました~? HP巡ってたら偶然見つけちゃいましたよ~」」
「それって、ペット探し専門の探偵?」
「そうなんですよ。だいたい3日で7万ぐらい。けっこうお高いですよねっ!」
「発見率の方はどうなの?」
「そっちは…あんまり高くないみたい。広告では70%とあるけど、実際は30~40%ってとこみたいですよ~」
「本職でそれじゃあ、私がそう簡単に探し出せるわけないわよね。はぁ、ますます自信なくしちゃう」
「薫子さんがんばっ! ものは相談なんですけど、この調査がうまくいったら、ペット探偵も副業でやっちゃいません? 社長兼マネージャーやってもいいですよぉ」
「冗談じゃないわよ。ペットだから行動も読めないし、ほんと大変なんだから」
「聞き込みの成果はどうなんですか~?」
「聞けるのは刈谷さんの悪い噂ばかりよ。やっぱりジローは飼い主が嫌で逃げ出してしまったんじゃないかしら」
「ありえますよ! だって犬って、家を忘れないっていうじゃないですか~。何百キロも離れた場所に引っ越しても、元の家に帰ってしまう犬の話とかありますし。なのにごく近所で迷子になったのに、3日以上も帰ってこなって、絶対変ですよっ!」
「誰かに連れ去られたってセンも考えたけど、子犬ならともかくすっかり育っている犬を攫っても仕方ないと思うのよね。やっぱりジローが自分から逃げ出したって考えるのが妥当かしら。でもそう思うと、探し出して連れ戻すのってなんかかわいそうなのかも…」
「うーん…難しい問題ですね~」
「まあ、とにかくジローを探し出すことが仕事だから、あまり考えすぎないようにしないとね。じゃあ、明日も1日歩き回らなきゃならないし、もう帰るわね」
「はーい。お疲れさま~」
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関谷うらら
  • Author: 関谷うらら
  • 妄想大爆走な文章を書くのが趣味の♀です。
    「妄想は自分を裏切らない、妄想も自分を裏切ってはならない」が座右の銘ですw

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